第5話 パジャマパーティー
- 2025年8月30日
- 読了時間: 3分

「そ、それじゃあっ、こ、これを授けよう、しっぽ!」
声が響いたのは、夜のリビング。
月明かりに照らされた中、あきが真顔で仁王立ち。
その手には、くるくる巻かれたかわいすぎるパジャマ。
「ぼくの、セレクトだから。うん。さいこうに、カワイイから」
「……ぴこん?」
しっぽは、あきの差し出すパジャマをじっと見つめていた。
両手でそっと受け取ると、もじもじと頬を赤らめ、こくんとひとつうなずく。
「ふふ……似合うと思ってたもん。やっぱ、ぼくって、センス神……!」
あきがくるりとターンして、勝手に“勝利ポーズ”を決めていると、背後から別の声が飛んだ。
「……なにしとんねん、深夜テンションか、おまえは」
声の主は、はる。
片手に牛乳パック、もう片手であくびを隠しながらキッチンから出てくる。
「しっぽにパジャマ?おもろ。どしたん?」
「授けたの!兄としての……その、なんか、使命感!」
「急におにーちゃんヅラか、おまえ……」
はるは笑いながらソファにどさっと座る。
そして、パジャマをぎゅうと抱えてにこにこしてるしっぽを見て、眉をゆるめた。
「……で、どこで寝るん?」
「ここ」
しっぽがちょこんとソファを指差す。
「そっか。……せやな、うち、部屋埋まってるしな」
「え、じゃあパジャマパーティーじゃん! ぼくも混ざる〜!!」
「え、まじ?おれも?おれもおれも?おれ、いびきヤバいけど?」
「聞いてないし。あ、でもそのへん、兄として許す。今夜だけは」
そう言って、あきはしっぽの頭をぽんぽんっとなでた。
その手つきは、すこしぎこちなくて、でもどこか本気だった。
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夜がふけていくにつれて、リビングにはクッションやぬいぐるみ、毛布がわちゃわちゃと集まっていく。
「こっち来いって、しっぽ〜、それおれの枕〜」
「おふとん、はんぶんこ……!」
「ちょ、くすぐったい、近すぎ、でも可愛い……」
言い合いながらも、気づけば三人でぎゅうぎゅうになっていた。
はるは笑いながらも、一番端っこに回り、しっぽを真ん中にして、あきはぐったりしながらもしっぽの頭を支えてやる。
「……ぼくさ」
「んー?」
「……こういうの、あんま得意じゃなかったの」
あきがぽつりとこぼすと、はるが枕の向こうから片目だけ出して「は?」と返す。
「いや、なにそのカミングアウト」
「ちがうってば……ほら、仲良しグループとか、家族っぽいのとか、なんか、うまくやれないこと多くて」
「……せやな。わかるで。おまえ、かわいい取り合いでブチ切れてきそうなタイプやし」
「う……ち、ちが、くない……ことも……!」
しっぽが、あきの服の袖をきゅっとつまんだ。
その動きに、あきはばちばちに顔を赤くする。
「うわっ、しっぽ、そんな攻撃反則……こ、心の防御力……!」
はるはけらけら笑いながら、
「はいはい、もう黙って寝とけ。おれが布団役したるわ」
「わ、ほんとに言ったな!? 言ったからな!? 一生言うからな!!」
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そのまま、眠りにつく直前。
「……なつ、見た?」
ふゆが、ソファの後ろからなつのティーカップをのぞきこんでいる。
「んー? あれ?パジャマ会議でもやってんのかね」
「ちがうよ。……しっぽ、はじめての夜だよ」
なつが、くすっと笑う。
「……ああ、そっか。そりゃ……静かにしといてやんなきゃな」
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その夜、月明かりの中で、
しっぽは――ふたりに挟まれて、ぽかぽかと眠っていた。
「……ふぐぅ……」
その寝言に、あきが夢うつつで「かわいすぎ……」と返すと、はるが小声で「おまえは黙れ」とツッコんだ。
あたたかい、パジャマパーティーの夜だった。




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